2011年2月8日火曜日

十七章 伊予の二見

昨夜一杯やった相手は、三重県伊勢市からやってきた山田祥平くん32歳。人力車が大好きで、人力車を引きながら日本一周を果たした男です。



東京出身の山田くんは、京都の大学に進学するのですが、生まれつき内気で引きこもりがちだったため「人とうまくコミュニケーションをとれるようになりたい」と観光客相手のアルバイトを探します。そこで出会った運命の仕事が「人力車」。道後温泉の前で観光客を乗せて人力車を引いてるお兄さんたちがいますが、あの仕事です。

やってみると、人力車を引くのが楽しくて楽しくて仕方がない。大学を三年間休学して人力車にのめり込みます。人力車は一台180万円もするのですぐに買うことは出来ない。ならば人力車を所有し貸してくれる町に移り住もうと、あちこち探してたどり着いた先が、伊勢神宮のお膝元、三重県伊勢市の「二見」という町。

写真は「伊勢二見」の夫婦岩。北条にある「伊予の二見」の本家ですね。



そこに移り住んだ彼は、町が所有する人力車を借りて、人力車そのものの魅力を伝えたいと市長ら大勢に見送られ日本一周の旅に出ます。普通仕事で人力車を引くときは時速10km近くで走るそうなんですが、日本一周の旅は一日約15kmずつ進むゆっくりした旅だったそうです。

伊勢から東海道を通って北進。東京から埼玉、栃木、宮城、岩手、青森を抜けて北海道へ。北海道を回った後、青森から秋田、山形、新潟、富山、石川、福井、京都、兵庫、鳥取、島根、山口と、日本海側をずうっと下って今度は九州、沖縄を廻って、九州から中国地方瀬戸内海沿いを通って四国へ。四国を回ったあとは大阪を抜けて、去年の11月22日、出発した伊勢で日本一周のゴール。約2年の旅。

昨日彼は、旅の途中、松山でお世話になった人たちにお礼に来ていて、そのお礼先だった風早社中メンバーが経営する「エコ道後」という道後の旅館に僕がたまたま現れて、夜一緒に一杯やることになったのです。


ここで問題。
人力車を引きながら日本一周した山田くんが一番好きだった町は次のうちどこ?
1.函館
2.松山
3.長崎

答えは、

一位は松山、二位函館、三位長崎だったそう。松山は町の調和がとれていてみんながやさしいと。お世辞でもうれしいですね。逆につらかった町、無視されるよう冷たい仕打ちにあった町もあったようですが、ワースト3はふせておきます。

人力車の話をしている時の山田くんの顔は、おじいちゃんが孫をあやしている時のようににやけた甘い顔になります。とにかく人力車を引くのが好きで好きでしょうがないのです。

そんなに好きな物があるっていうことも、日本中を旅して廻れる環境も、毎日あくせくした生活に追われる我々にとってはうらやましい限りですが、忘れかけていた大切なことを思い出させてくれるのはいつもこういう外からの風、旅人です。旅人から旅の話を聞いていると自分も一緒に旅をしているような気分になれます。

彼は今後、伊勢二見で全国からたくさんの旅人が来てくれるようなカフェや旅館をしたいと言ってました。あと、「伊予の二見、夫婦岩の縁もあるので、松山ともっと親密な交流ができれば」とも言ってました。彼は伊勢市長さんとも知り合いらしいので、「近い将来伊勢と松山が姉妹都市になれるよう薦めてもらって、互いの夫婦岩に大勢の観光客がくるように交流を深めていければいいですね。」と話しました。


以下写真は北条の伊予の二見、夫婦岩。
一昨日山田くんはこの景色が目の前にある北条土手内TOWERにたまたまお茶しに来ていたそうです。